妖精事務員たみこ 会議の掟
【妖精事務員たみこ プレゼンの掟 その1】 BY かねこ・きくえ
最近、「スターバックスにのり弁を持ち込んで追い出される会」を結成した かねこ きくえ 先生にはげましのメールを出そう。先生の座右の銘は、「自分の墓穴くらい自分で掘れなくてどうする!? 」(by 島本和彦)です。
あるさわやかな初夏の午後、たみこはアメリカナイズされた大味な企画書をコピーしていました。すると、変な人がびちゃびちゃと生臭い水をしたたらせながら、オフィスに入ってきました。異様に目が離れていて、スーツの背中から背びれが飛び出しています。
社内では一度も見たことのない人です。たみこは、近くを通りかかった浅倉みなみちゃんに声をかけました。みなみちゃんは「確実にもてる女の子は、やれそうな女の子。それよりもてるのは、すぐにやれそうな女の子。」といった人間社会の常識を身をもって教えてくれる親切な人です。社内では、必要以上の親しみを込めて「荒野の肉人形 みなみちゃん」と呼ばれています。
「あのサカナみたいな人って誰かしら?」
たみこは、みなみちゃんに尋ねました。
「あれ?っていうか、あれは、半魚人じゃないの?」
みなみちゃんは、びっくりして大きな声をあげました。
「あああっ!ほんとだ!半魚人だ。マグロの半魚人だ!」
部長の聖徳太子が、ものさしで磨いて作ったサーベルを振り上げて、わめきちらしました。謎の侵入者は、すばやい動作で、みなみちゃんにとびついくと、のど元に刺身包丁をつきつけました。その反動で、スーツが破れてその下にある銀色のウロコがでてきます。
「祭囃子 金太郎(まつりばやし きんたろう)を出せ。」
半魚人が、新鮮なトロの匂いをまきちらしながら、叫びました。オフィスはまるで魚河岸のような匂いでいっぱいになりました。
「きさま、どっかの代理店のまわしものだな?もみてのしすぎで、指紋が擦り切れてるじゃないか!?アボガドもってこい!カリフォルニア巻にしてやる。」
「たみこのオフィス図鑑」 http://snow.csidenet.com/day/01021.html
【妖精事務員たみこ プレゼンの掟 その2】 BY かねこ・きくえ
渋谷の宮益坂を上りきったところに、アメリカ寿司の専門店があります。さまざまなアメリカナイズされた巻寿司を出してくれますが、どれもでかすぎて、ひとりでは2本が限界です。カリフォルニアで夢破れて、帰ってきたマスターが握ってくれます(ホント)。アメリカ寿司オフ会を計画している かねこ・きくえ 先生は幹事募集中です(ウソ)
。
祭囃子 金太郎(まつりばやし きんたろう)は、あと数日にせまったプレゼンのために、社員食堂の片隅で滝に打たれながら、尺八を吹いて精神統一をしていました。
「心頭滅却すれば、イントラも2チャンネル。ボエボエボー」
祭囃子は、ぶつぶつとマントラ(まあ、お経みたいなもんですか)を唱えます。
「第1級社内警報発令! 半魚人が営業3部に進入!半魚人はマグロの模様! くりかえす半魚人はマグロ。 鯖(サバ)ではありません。」
突然、社内放送が響きました。
営業3部の部員である祭囃子は、あわてて食堂の壁に立てかけられていた半魚人撃退用のモリをかかえると飛び出しました。
祭囃子は、営業3部に、いきおいよく飛び込みました。
「えすくれめんとぉおおおおー! 」
祭囃子は、大声をあげて半魚人に、モリを投げつけました。でも、あわててしまったので、モリは半魚人ではなく、みなみちゃんの脳天につきささってしまうのでした。みなみちゃんの脳天からピューと血が吹き出しました。
「みなみちゃんが、潮を吹いたぞー!」
「IWCはミンククジラの調査捕鯨を認めろ」
フィンランド人の社員が、潮吹きを見て興奮して叫びます。
半魚人は、みなみちゃんを放り出すと、祭囃子に飛びかかりました。
「たみこのオフィス図鑑」 http://snow.csidenet.com/day/01021.html
【妖精事務員たみこ プレゼンの掟 その3】 BY かねこ・きくえ
最近、株式公開の歌を作ってストリートミュージシャンしている かねこ・きくえ 先生のライブを見に行こう(ウソ)。
「株式公開 一攫千金 監査法人 フシ穴投資家 ワラント借金 イエー」(「公開慕情」かねこ・きくえ より)
「うわわわ」
祭囃子(まつりばやし)は、半魚人に飛びかかろうとしたのですが、足をひっかけて、床に倒れてしまいました。すかさず半魚人は、みなみちゃんに突き刺さったモリを引き抜くと、くるりと回して祭囃子の背中にぶっすりと突き刺しました。
会計処理のミスを発見した時に監査法人が見せるという血も凍る笑顔が半魚人の顔に浮かびます。
「明日のプレゼンは、あきらめるんだな。ギョヘギョヘギョヘ」
半魚人は、モリの先に暴れる祭囃子をさしたまま、窓から飛び出して逃げてゆきました。
半魚人たちが立ち去ったあとには、キャバクラ「ビットスタイル」の割引券とサラ金のカードが残されていました。窓には、半魚人のものと思われる銀色のウロコがきらきらと輝いています。
「ウロコを残す敵なんて、ブレードランナーみたいだわ」
たみこは、少しの間、ブレードランナーの世界にひたりました。妄想の中にひたれる能力が高まってきたようです。自分だけに都合のよい妄想をたくましくするのは、ネットビジネスでもっとも重要な能力のひとつです。
「株式公開できそうな気がする・・・」
たみこは思わずつぶやきました。
「たたたた・・・たいへんだ」
課長の聖徳太子が、へたくそなラッパーみたいに、あちこちに手とか指をつきだしながら騒ぎ出しました。
動転した聖徳太子は、携帯電話を振り回しながら、どこかに走っていってしまいました。
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【妖精事務員たみこ プレゼンの掟 その4】 BY かねこ・きくえ
ファンレターくださったみなさまありがとうございます。誌面を借りてお礼申しあげます。このようなつたない作品にリンクしていただいた「耳袋」様。ありがとうございます。リンク集の中で、かなり浮いてる感じがするのは気のせいでしょうか・・・
「プレゼン担当の祭囃子くんが北*鮮に拉致された。ちがった。半魚人に拉致された。マグロの半魚人に拉致されたぞ。」
明日には、大事なクライアントへのプレゼンがあるというのに、熱血プレゼン戦士の祭囃子 金太郎(まつりばやし きんたろう)が、さらわれてしまったのです。社内のみんなは、パニック状態です。気が動転して、4年後のW杯の予想をはじめたり、同じ請求書を何枚もプリントしたり、しまいには死んだ子供の年を数えだすものまで出る始末です。
「大変だわ。みんながパニックになっている今こそ私ががんばらなきゃ」
たみこは、プレゼン妖精「オケハザマ」を呼び出すことにしました。もっとも強烈なプレゼンをするといわれている幻の妖精です。
「助けてプレゼン妖精オケハザマ! 」
たみこは、右手のピンクのツケ爪をはがすと、額に貼りました。あぶないヤツと勘違いした回りの社員が、たみこの回りからあとづさりして離れました。
ピンクのツケ爪がキラキラ輝きだしました。事務所の扉が神々しい光に満たされました。その光の向こうから、ロバにのった黒い影法師がゆっくりと近づいてくるではないですか。
ロバにまたがっているのは、触覚のついた巨大なアンマン。それがオケハザマの姿でした。
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【妖精事務員たみこ プレゼンの掟 その5】 BY かねこ・きくえ
ネットベンチャーの株主総会に「免罪符」とフェイスペインティングした 白木みのる があらわれる夢を見ました。とりあえず かねこ・きくえ 先生に熱烈なファンレターを送ろう。
熱血プレゼン戦士 祭囃子 金太郎(まつりばやし きんたろう)を拉致した半魚人は、旧来型企業の一員なのでした。旧来型企業戦士は「古きものども」とよばれ、ことあるごとにネットビジネス戦士たちと争っています。
半魚人たちはアジトで「良心回路」を祭囃子(まつりばやし)の体に埋め込む手術の準備をはじめていました。「良心回路」を内蔵された者は、慎重で奥ゆかしい物静かな性格になってしまい、2度と広告営業できない身体になってしまうのです。
「正直者になったおまえは、これから広告業界のガッツ石松と呼ばれるのだ」
祭囃子の身体にメスがあてられようとしたその瞬間。どこからともなく、荘厳なパイプオルガンの調べが響き渡りました。
とたんに、半魚人たちの動きが止まります。半魚人は、毎朝、広告の神様に祈りをささげている信仰深い種族なのです。半魚人たちは、窓に飛びついて外を見ました。そこには、アンマンのような姿をしたオケハザマがいました。
オケハザマに内蔵されたパイプオルガンがテレビショッピングのBGMによく似た神々しい調べをかなでました。半魚人たちは、あまりのありがたさにいっせいにひれ伏しました。中には「高枝バサミください」と叫ぶものもいます。
オケハザマの身体から巨大スクリーンが飛び出して広がりました。くっきりと文字が浮かび上がります。
− 人質解放に関する戦略のご提案 −
オケハザマは、人質開放がどれほど半魚人にとってメリットあることなのかををプレゼンしだしました。
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【妖精事務員たみこ プレゼンの掟 その6】 BY かねこ・きくえ
「最初は、共通の話題でジョークを振って雰囲気を和らげるのだ」
プレゼン妖精オケハザマのあんこのようなぽってりした唇が開いてプレゼンの掟を語りだしました。
「サイバーエージェントのビルに塀ができたってねえ」
「******」(あまりにアヴァンギャルドなジョークのため掲載不可)
半魚人たちの間から、くすくすという笑い声があふれ、ほのぼのとした雰囲気にあたりは満たされました。固いエラをゆるめてほほえんでいる半魚人までいます。
「人質解放にあたって考慮すべきポイントは3つございます」
突然、オケハザマの全身からスピーカーが飛び出しました。ものすごい音量のインパクトで、半魚人たちが会社の窓から転げ落ちました。
半魚人は陸に打ち上げられたサカナのように、ぱっくり口をあけて、復唱しました。
「ポイントは3つ・・・」
オケハザマは、あふれんばかりの説得力でポイントを解説します。オケハザマの身体についた無数の目玉が、半魚人をひとりづつ見据えます。
「目は口ほどにものをいい」
この目に見つめられると、なぜかいうことを聞いてしまいそうになってしまいます。オケハザマは、つじつまは合わないのに妙に説得力のあるプレゼンを続けます。半魚人たちは、だんだんと拉致した祭囃子を開放した方がよいような気分になってきました。
「わたしくどもでは、この原因を5つに絞りました」
オケハザマの身体から突き出したトランペットが、勇ましい行進曲を響かせます。おもわず半魚人たちが、行進をはじめます。
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【妖精事務員たみこ プレゼンの掟 その7】 BY かねこ・きくえ
半魚人のTシャツで第2のユニクロを目指す かねこ・きくえ 先生にはげましのお便りを送ろう。きくえ先生は、お中元受付中です。
オケハザマのプレゼンで洗脳された半魚人はアジトの中に行進して入ると、祭囃子 金太郎(まつりばやし きんたろう)を連れて出てきました。
オケハザマの身体のトランペットが感動の絶叫をあげます。
とたんに、半魚人のひとみから、海洋深層水の涙があふれだしました。感動の涙で目が見えません。このスキに契約書にハンコを押させてやるのです。
オケハザマは、こらえきれない涙にまみれて地面につっぷしている半魚人たちにトドメの攻撃をしかけました。
「魂の叫びを聞くのだ。コゲつかないナベが欲しくないか!? オオーッツ!」
とたんに、半魚人たちは、万能ナベが欲しくなって、申込書にハンコを押しまくりました。
「山海の珍味が欲しくないか!?」
とたんに、半魚人たちは、山海の珍味が欲しくなりました。
「クリック保証広告を出すのだ」
とたんに、半魚人たちは、クリック保証広告に申込み出しました。
「プレゼンとは、心の旅路、魂の咆哮なのだ。ノープロブレム」
オケハザマは、そう叫ぶと、あらわれた時のように、ロバにまたがって去ってゆきました。
「クオヴァディス?」
半魚人たちがオケハザマの背中に問いかけました。もちろん答えはありません。
プレゼン妖精オケハザマの力で、卑劣な半魚人たちを倒すことができました。でも、たみこは油断しません。これからも新しい敵が続々と たみこ をねらってあらわれるのです。がんばれ たみこ! 負けるな たみこ!
「たみこのオフィス図鑑」 http://snow.csidenet.com/day/01021.html
妖精事務員たみこ
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