妖精事務員たみこ 会議の掟


【妖精事務員たみこ 会議の掟 その1】 作 かねこ・きくえ
「妖精事務員たみこ」は、おしゃれでシュールでアヴァンギャルドな泣いて笑ってビジネスの役にもたつ、盛りだくさんのコラムです。めでたし、めでたし。

 たみこは、妖精の国からやってきた、世界でただひとりの妖精事務員です。でも、頭に触覚をつけたり、語尾に「にょ」とかつけたりはしません。そのかわりいつもピンクハウスの服を来ています(だからといってたみこは太ってはいません)。
 たみこは、ネットビジネスの聖地といわれる渋谷のマークシティにある会社に、ネットビジネスのノウハウを学ぶために妖精であることを隠して潜入していました。
「なんで、会議は、こんなに退屈なのかしら」
 潜入している会社の会議に参加したたみこは思わずつぶやきました。
 マークシティにあるその会社では、会社の半分が会議室で、社員は1日の1/3を会議をして過ごし、あとの1/3でオフィスラブかオークションをして、最後の1/3は仕事が遅れたお詫びをクライアントにするという多忙な日々を送っていました。
 たみこのひとりごとを耳にした大根丸が「よし、教えてあげよう」といいました。
 大根丸とは「ビジネスエリート 桐生克己」を内蔵したビジネス万能の大根型ロボットです。でも、ちょっと見ると、単にマジックで顔を書いた大根です。
 大根丸を小脇に抱えてて歩くたみこは、はたから見ると、大根を抱えた危ないコスプレ女です。そのせいで、たみこのまわりには、誰も近寄ろうとしてくれません。人間の世界に来てから、たみこに話しかけてくれたのは、美少女フィギュアを背中にしょったシステム部の人たちだけでした。
「会議の効率は参加者の数に反比例する」
 大根丸は、1日に1回ビジネス格言をいいます。たみこは、すかさずメモをとりました。
「なるほど、でもそうだとすると、この会社では、たくさんの人が会議に参加するからとても効率が悪いんじゃないかしら」


【妖精事務員たみこ 会議の掟 その2】 作 かねこ・きくえ
あなたの妄想をかきたて、ビジネス想像力を飛躍的に向上させる「妖精事務員たみこ」が今週もやってまいりました。

 会議をちゃんと進めるには、出席者の中で理解能力が発展途上国の人(頭が悪いともいいます)にあわせなければならないため、会議の参加者がふえるほど、会議は非効率になってゆくのでした。
「じゃあ、会議の参加者を減らせばいいじゃない」
 たみこがつぶやくと会議に参加していた発展途上国の人(主として年配者)が、いっせいに振り返りました。おどろいたことに、みんなフェイスペイントをしています。
「会議で大事なのは、一期一会の人とのふれあいだ!ふれあい、ふれあい、こみにゅけーしょん」
 徳川家康風のペインティングをした課長が金切り声をあげました。
「和をもってとうとしとなす!」
 聖徳太子そっくりの部長が、どこに隠していたのか、サーベルをかかげました。
「合体労働戦隊 カイギマン」
年配の社員がいっせいに立ち上がると、声をそろえて叫びました。その瞬間、まばゆい光が会議室いっぱいに広がりました。光がおさまるとそこには大魔神のような怪物がいました。腕とか、肩に見たことのある課長や係長の顔がついています。
ネットビジネスでは、常識では考えられないようなことが起きるものなのです。
 カイギマンは、腰につけたサーベル 魔剣マルチメディアを抜きました。ぎらぎらしたドッグイヤーの輝きがたみこの目につきささります。
「さあ、会議を続けるんだあああああああああ」
 サーベルを振り回しながらカイギマンの腕や肩についた課長や係長が、低い声でうなるように怒鳴りました。
「議事録をとるんだ。社内の出席者は名前だけ、社外の人には様とかつけるのを忘れるな。席順は、あれほど教えたろう。上座はどっちだああああああ?」


【妖精事務員たみこ 会議の掟 その3】 作 かねこ・きくえ
今日もビジネス、明日もビジネス。かねこ・きくえのコラムが読めるのは、「今日のmelma!」だけ。

「見出しはゴシック、本文は明朝。」
 カイギマンは、ビジネスマネーをわめきちらしながら、魔剣マルチメディアを振り回しました。
 合体しそこねた社員が会議室を逃げ惑います。カイギマンの魔力で会議室の扉は固くとざされて、誰も会議室から出れなくなってしまったのです。
「バカもん。議事録の最後には、確認事項をいれろといったろう」
 カイギマンのサーベルが、PDAを持った新入社員に振り下ろされました。スパーンとなんだかいい音がして、首が飛んでゆきました。
「たーまやー」
 ネットビジネス界には、ほとんどいない江戸っ子の社員が声をあげました。
「ちょっとEXCELが使えるからといっていい気になるんじゃない。」
 カイギマンは、地の底から響くような笑い声をあげました。
 ネットビジネスの会社の会議室は、ガラス張りなので、外からはこの惨劇が手にとるように見えていました。見ている人はゲラゲラ笑うばかりで誰も助けてはくれないのでした。他人の不幸は蜜の味。
「また、カイギマンが新人に説教してるぜ」
 みんななれっこなのです。
「ビジネスは、真剣勝負。会議は戦場なんだわ。」
 たみこは、あらためてネットビジネスの厳しさを思い知るのでした。
「議事録は、その日のうちにメールで先方に送っておけといったろう」
 またまた、若手社員が脳天からカイギマンにまっぷたつに切られました。
 カイギマンがたみこをにらみました。
「チャットと不倫は、職場の花。メールは印刷しておけっていっただろう。」
 カイギマンの刃が妖精事務員たみこに、振り下ろされました。


【妖精事務員たみこ 会議の掟 その4】 BY かねこ・きくえ
渋谷のビットバレー周辺ではスプレーで「女工哀史」と落書きするのがはやっています。対抗して新大久保で「帝王切開」と書きまくっている かねこ・きくえ 先生に励ましのお便りを出そう。返事は来ないけどね。

 カイギマンの刃を向けられたたみこは、ポケットから緑の小ビンをとりだして、かざしました。「量産型株価暴落妖精ナ・スダック」が飛び出します。この攻撃妖精は、ねらった相手を疑心暗鬼に陥らせて、仲間われを起こさせるのです。株式公開したとたんに、とっとと株を売っぱらってやめてしまう役員などは、この妖精の攻撃を受けているのです。
 カイギマンの足がとまりました。
「なんで、オレが足なんだよ。いつもいつも足ばっかで痛えんだよ」
 太ももから首を出している山崎係長が、愚痴をこぼしています。カイギマンは合体した時のタイミングで、足や肩などの場所がきまってしまうのです。これはネットビジネスの質量保存の法則とよばれています。
「おまえら、アレだろ。オレが間違って個人情報漏洩したのを、まだ恨んでいるんだろ。」
 ネットビジネスの世界では、お客様から預かった重要な個人情報を漏洩してしまうことなど日常茶飯事です。
 カイギマンの身体のあちこちから、愚痴が飛び出します。愚痴は七色の毒ガスと なって、会議室いっぱいにたちこめました。
「く、く、苦しい。目が見えない・・・」
 カイギマンが苦しみ出しました。

 妖精事務員たみこには、大根丸やカイギマン、聖徳太子など、たくさんのキャラクターが登場します。キャラクターがわからなくなったら「たみこのオフィス図鑑」でチェック! http://snow.csidenet.com/day/01021.html


【妖精事務員たみこ 会議の掟 その5】 BY かねこ・きくえ
 「合体労働戦隊 カイギマンの特殊能力」その1、カイギマン・イヤーは、社内の喫煙スペースとトイレで交されるすべての会話を盗聴することができます。その2、カイギマン・アイは、社員の美容整形、子供の成績や不倫相手の血糖値まで知ることができます(ときどき、間違えます)。その3、カイギマン・マウスは、飲み屋で会社の悪口をいったり、できもしない大口を叩いたりします。すべての能力は、昇進可能性に反比例して強化されます。

 一瞬、カイギマンにスキができました。たみこは、それを見逃しません。
「ゆけ! 二ムダ大佐! MSNボンバー!」
 たみこの小脇に抱えた大根丸から人間魚雷「ニムダ大佐」が、ネットバブル崩壊の轟音とともに放たれました。七色の愚痴ガスをつきぬけて、「ニムダ大佐」がカイギマンの胸元に命中しました。
「会議のおわりには、検討課題と締め切りと担当を再確認すんだぞ!」
 カイギマンは、末期のひとことを叫んで爆発しました。企画会議終了の激しい余震が会社全体を激しくゆさぶりました。
 会議室のすみに避難していた社員が誰ともなく「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」を歌いだしました。店の閉店で「蛍の光」を流すように会議の終わりには、必ずこの歌を歌うことになっているのです。
「船頭多くして、船陸に上がる」
 大根丸に内蔵された「ビジネスエリート 桐生克己」がつぶやきました。大根丸は、その戦闘能力の高さから「野菜畑の核弾頭」と呼ばれています。好きな言葉は財務諸表、嫌いなもの言葉は債務超過。

 カイギマンは、無事に撃退することができた。しかし、ネットビジネスの世界には、まだまだ、たみこの想像もおよばないおそろしい怪物が待っている。がんばれ!たみこ!ネットビジネスの輝く星となれ。間違ってもマザーズに上場して、逮捕されたりするな。

 「たみこのオフィス図鑑」 http://snow.csidenet.com/day/01021.html


妖精事務員たみこ

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