妖精事務員たみこ 通勤の掟 とりあえずそういうことで
妖精事務員たみこ 出勤の掟
最近、インターネット・フューチャーというメールマガジンでたみこを連載しております。
せっかくなので、ここでも紹介しようと思います。
【妖精事務員たみこ 通勤の掟 その1】 作 かねこ・きくえ
「妖精事務員たみこ」は、おしゃれでシュールでアヴァンギャルドな泣いて笑ってビジネスの役にもたつ、盛りだくさんのコラムです。めでたし、めでたし。
主人公たみこは、妖精の国からやってきた、世界でただひとりの妖精事務員です。でも、その正体は、妖精の国「びちょうたん」の王女なのです。
「びちょうたん」は長引く不景気で壊滅の危機に瀕していました。たみこは、王国の危機を救うために、ビジネス先進惑星地球にビジネス奥義をおしのびで学びに来たのです。
たみこは、さまざまな地球上のビジネスを経験しながら、ビジネスファイターとしての能力に磨きをかけてゆきます。
たみこを影ながら守るボディーガード「大根丸」は、王国精鋭のビジネス忍者。大根型の高性能ロボットです。
この童話は、たみこの成長を追いながら、悲しくもせつなくバカバカしい地球のビジネスの実態を赤裸々にあばくブロードバンド時代の女工哀史なのであります。
たみこは、失われたネットビジネスの聖地、渋谷マークシティの近くの広告代理店に身分を隠してつとめています。妖精の国の王女などといったら、とたんに病院送りになってしまいます。
今日もまた、たみこはビジネス修行に出勤するのです。
地球では、通勤ひとつとってもただ事ではありません。
【妖精事務員たみこ 通勤の掟 その2】 作 かねこ・きくえ
最近、ほんとうに妖精の姿が見えるようになってきた かねこ・きくえ先生は、街で見かけた妖精を写真にとって、アルバムに保管しています。先日、知人に見せたところ「なんにも写っていないよ」といわれました。日に日にステキになってゆく かねこ・きくえ先生にファンレターを出そう。
たみこは、ピンクハウスの服を身にまとって会社への道をスキップしながら歩いていました。道行く人は、大根を抱えてスキップする たみこ をよけるようにして歩いています。心なしかみんな伏目がちです。目をあわせたくないんでしょう。
ふと道端を見ると、働き者の妖精さんたちが、とぼとぼと歩いています。ハチみたいな格好をしていますが、人間たちの耳元で甘い言葉をささやいて働き者にかえてしまう能力をもっているのです。
遠い昔、「資本家」という名前の人間に、大量に雇われて、人間の国に移住している妖精たちなのでした。資本論外伝「マルクス昆虫記」によると、働き者の妖精さんは、労働者階級の人々に、夢という名の蜜を与えて、働かせつづけてきたのでした。
一度、働き者の妖精さんにとりつかれてしまうと、その人間は死ぬか、解脱するまで永遠に働き続けることになってしまうのです。
− 働き者の妖精さんが、とぼとぼ歩いているなんてどうしたんでしょう? −
たみこは、不思議に思って、ひとりの妖精さんに話しかけました。
「それが、ひどい話でんねん。わいらの天敵の”デビューマン”が大量に発生してまんねん。」
働き者の妖精さんは、おかしな関西弁を使います。
【妖精事務員たみこ 通勤の掟 その3】 作 かねこ・きくえ
最近、メルマガ戦士メルマーくんを WEB で公開したところ、思いもかけない人から思いもかけないご批判をいただいたりしている かねこ・きくえ先生です。「一瞬にして株券を紙くずにかえる メルマービーム」などと書いたのがよくなかったようです。がんばれ! メルマーくん!
「デビューマン・・・」
デビューマンというのは、ミュージシャンとか、タレントとか、いろいろなクールで恥知らずな仕事につくように耳元でささやくアンチ「資本家」妖精です。
デビューマンの手にかかると、人間はまともに働くのをやめて、テレビのオーディション番組を見たり、楽器もできないのにバンドを組んだり、芸がない人は「マネーの虎」に出演したりするのです。
資本論外伝「マルクス昆虫記」によると「デビューマンは、労働者階級を腐敗させるアヘンだ」そうです。ちなみに、この原稿を読んでいるあなたは、間違いなく労働者階級です。中流家庭というのは、自覚のない労働者です。
ふと、たみこは、気が付きました。街はデビューマンが繁殖しやすいパッション・ブルーの安手の夢にあふれています。
− せっかく人間世界にビジネスを学びに来たのに、悪い妖精のデビューマンがこんなに繁殖しているとは思わなかったわ −
足早に歩くたみこの耳元に、どこからともなくやってきたデビューマンがささやきます。
「そこの事務所のものなんだけど、よかったらちょっと・・・」
【妖精事務員たみこ 通勤の掟 その4】 作 かねこ・きくえ
みなさんは「ブレードランナー」見たことがありますか? かねこ・きくえ先生は、月に1回は見ています。最近、お気に入りのシーンは、蛇女がガラスを破るシーンです。
まるでティッシュ配りのような気軽さで、デビューマンがささやいてきます。
まわりを見ると、働き者の妖精さんでも避けてとおるような人間未満の若者が簡単にその気になっています。
「こんな寄り道をしていてはいけないわ」
たみこは、つきまとってくるデビューマンを振り払うようにして歩きました。渋谷の街には、デビューマンが蚊よりたくさんいます。あちこちに、デビューマンの熱病にうかされた若者がへたくそな字を色紙に書いて売ったり、殺人的な歌をうたったりしています。
「ああ、邪魔くさいわ」
たみこが、つぶやくと小脇に抱えた大根型ロボット大根丸がアドバイスしてくれました。
「それなら”わだつみ”を使うといい」
たみこは、なるほどと思って、ポシェットから小ぶりな竹やりを取り出しました。30センチくらいの短いものです。「聞け、わだつみの声」と竹やりに書いてあります。
たみこが竹やりで、デビューマンをつつくと、デビューマンはチクワになってしまいました。次から次へとチクワが道に転がります。働きものの妖精さんは、いままでしいたげられた腹いせにチクワをパクパク食べています。
「チクワばばあだ!」
人間未満の子供たちが、たみこを指差して笑います。
妖精事務員たみこ
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